お客さんはどうやって来店・購入・リピートするのか | 顧客行動の理解

お客さんはどうやって来店・購入・リピートするのか | 顧客行動の理解

Webサイトに限らずマーケティングの基本的な話になりますが、各記事で繰り返し出てくる内容なので抜粋して紹介したいと思います。

お客さんは「知って、興味を持って、行きたいと思って、来店する」

上の図はマーケティングにおける消費者行動モデルを表した「AIDAの法則」と、購買プロセスにおける顧客の推移を表した「パーチェスファネル」という概念を組み合わせたものです。この図が表していることは2つあります。

1つは「お客さんが来店するまでには認知→興味→欲求→行動というプロセスを踏む」ということ。

もう1つは「フェーズ(段階)が進むごとに見込み客(来店の可能性のあるお客さん)の数は減少する」ということです。

上の図を実際の例で説明してみます。

あなたのお店が道路に面した女性向けエステサロンで、看板やメニューを店外に張り出しています。

あなたのお店の前を通って看板を見た人は老若男女問わず「お店を知る」ことになります。しかし男性やエステに興味のない女性はあなたのお店に興味を持たないため次の段階には進みません。電話でタクシーを呼ぶときの目印にくらいにはするかもしませんが、それも含めてお店を知っている状態なのです。

エステに興味のある女性が立ち止まりました。この時点で「お店や商品に興味を持つ」段階になります。お店の雰囲気や料金・メニュー、来店している人の客層などを見た結果、50代主婦は「若い子が来る店みたいだから辞めておこう」、20代フリーターは「料金が高いから辞めておこう」となり、次の段階に進みません。

30代OLさんが「お店の雰囲気もいいし、料金も手ごろだから入ってみようかな」と思い始めてようやく「行きたいと思う」になります。それでも「今エステに寄る時間が無いから辞めておこう」となれば来店してくれません。

最終的に看板を目にした人の内、来店に至るのは「エステに興味があってお店の雰囲気や料金に納得して今から時間がある女性」まで絞られます。

上記の例だと看板を見た中で「エステに興味があってお店の雰囲気や料金に納得して今から時間がある女性」が3,000人に1人だとして、月100人来店してもらうためには月300,000人、1日約10,000人に店舗の前の看板を見てもらう必要があります。都市部であっても駅や中心街でないとこの数字は現実的ではありません。

だから看板以外にも様々な方法を駆使して「お店を知っている=認知している」人の数を増やさなければいけない、というのがこの最初の図の示していることなのです。

お客さんは「知って、興味を持って、『検索して』、購入して、『共有する』」

AISASの法則

Web上での購買決定のプロセスについて電通が提唱した「AISAS」というモデルがあります。前述のAIDAと「Attention」、「Interest」、「Action」は同じですが、「Search(検索)」「Share(共有)」の2つのSが入ります。

お客さんは欲しいものがあった時Webで検索します。ここで注意すべきなのは「検索するのは必ずしも検索エンジン=Googleではない」ことです。Webで何かを購入したい人はAmazonや楽天で検索しますし、飲食店なら食べログやぐるなびやHotpepper、旅行や宿泊ならじゃらんや楽天トラベルやExpediaで検索します。「何かを購入するために検索するとき、アメリカ人の約60パーセントはAmazonから始める」とGoogleの公式ブログまで言っています。


※Google公式ブログ(英語):米司法省の独占禁止法での提訴に対する反論

そして購入した結果は共有されます。これもSNSでの発信だけではなく、Amazonや楽天の評価やカスタマーレビュー、口コミサイトへの書き込みなども含まれます。

お客さんが自ら情報を発信することは、販売する側は新たな情報発信源を獲得することにもなります。しかし提供した商品・サービスの品質に不満があれば悪評も同じように発信されます。

自分に都合の良い情報を発信しているかもしれない販売者の情報より、消費者の声が直に発信される口コミのほうが信憑性が高いと感じる人もいます。これをインフルエンスマーケティングと呼びます。その効果を逆手にとって口コミっぽく商品情報を流す行為をステルスマーケティングと呼び、バレると総叩きに合うのはご存じでしょう。

お客さんに「ファンになって、紹介して、発信してもらいたい」

ここまでは新規のお客さんに購入してもらうまでの流れでしたが、事業にとってもう一つの重要なお客さんがリピーターです。リピーターは店舗や商品を気に入ってくれて何度も来店・購入してくれるお客さんです。

これまでリピーターは「他に流出しないように繋ぎ留めておく」ことだけに注目されていましたが、前述のAISASの「共有」のように、「ファンになって、身近な人に紹介して、さらに広い人たち情報を共有・発信してもらう」という情報を発信してくれる媒体として着目されるようになりました。これもWebの発展と共に一人一人が情報発信者になれるようになったことの影響は大きいでしょう。

新規購入までの流れ(パーチェスファネル)と購入後の流れ(インフルエンスファネル)を図示したものが以下の「ダブルファネル」と呼ばれるものです。

ダブルファネル

商品や店舗を気に入ってくれたお客さんは繰り返し商品を買ってくれるようになります。これが「継続」であり、通常この状態をリピーターと呼びます。気に入ってくれるのを待つだけでなく、会員登録やSNSのフォローをしてもらってメールやSNS投稿、ダイレクトメールで再訪・再販を促す情報を発信したり、来店・購入毎に貯まるポイントカードなどのリピートを促す施策もあります。

さらに気に入って人に勧めたいと思ってもらうと「紹介」に繋がります。身近な知り合いに教えたり身近な範囲での情報の拡散がはじまります。前述の通りこうした口コミは店舗の宣伝より信憑性があり効果があると言われています。紹介を獲得するために「ご紹介キャンペーン」のように紹介カードを作成して来店時の割引を促すような施策があります。

紹介の範囲がさらに広がり、口コミサイトやSNSに投稿すると「共有」という段階になります。直接の知り合い以外の不特定多数に店舗や商品の情報が拡散されます。SNSのフォロー・ハッシュタグなどのキャンペーンは共有を獲得するための施策になります。

モデルを知ることは、注力する領域を明確にできる

マーケティング理論の勉強をすること自体が目的ではないのでかなり粗めの説明になりましたが、あえてこうしたマーケティングモデルを説明したのは「注力すべき領域を明確にするため」です。

どの施策も最終目的は集客です。店舗に来てもらう、商品を手に取ってもらうための方法です。しかし行っている施策が何を意図したものなのか、今力を入れるべきなのはどの領域なのか曖昧なまま闇雲に手を動かすことはかけた時間と労力(もしお金を使っていればお金も)に対して期待していたほどの効果得られないかもしれません。

個人事業主にとって本業はマーケティングではありません。飲食店であれば食事を提供すること、製造であればモノを作ること、販売であれば商品を届けることに注力したいはずです。しかし集客をおろそかにすればあなたのサービスや商品は多くの人に届かないままになってしまいます。

注力する領域を明確にしてそこに集中的に力をかけるために、マーケティングモデルという枠組みの「領域」という考え方を利用することが有効なのです。ちなみにAIDAの法則は1900年代にアメリカで提唱され、現在でも広く使われている信頼と実績のマーケティングモデルです。私が勝手に言い出したものではないので信用に値するものだと思います。

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