SNSで情報を発信する | Webマーケティング入門 chap.3.1

「お前なんかに言われなくてもSNSくらい知っとるわ!」という方もいると思いますが、それくらいSNSは広く市民権を得ているツールです。

ホームページやブログのように長い文章を推敲して載せるのではなくメール感覚の短文で投稿ができ、多くの人が情報を発信しているので見ているだけでも楽しむことができます。文字だけではなく動画系のYouTubeやTikTokもSNSに該当します。

今回はまずSNSの定義やSNS全般の特徴などを紹介して、個別のSNSサービスの説明は次の記事で行いたいと思います(続けて書こうとしたら文字数が10,000文字を超えてしまったので分けました)。

SNSの定義

SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)とは「登録された利用者同士が交流できる会員制Webサービス」のことです。

「交流」というのは、他の人の投稿を見たりするだけではなく、いいね!やリツイートしたり、友達申請やフォローで繋がったり、コミュニティへの参加したりなどのアクションのことです。そして「登録された利用者」=SNSのアカウントを持っている人以外は「交流」することができません。YouTubeはログインしなくても動画の視聴は可能ですが、評価・保存・チャンネル登録・コメントはできません。評価やチャンネル登録やコメントは「交流」になるためYouTubeもSNSと呼ぶことができるのです。

TwitterやFacebookのようにSNSのみを提供しているサービスだけでなく、他のサービスに付随する機能、例えばオンラインゲーム内のグループチャットなども「登録された利用者」のみで行う「交流」なので機能的にはSNSと呼ぶことができます。

SNSという言葉が出現したと思われる2006年(Twitter、Facebookのサービス提供開始年)以前からインターネットにはSNS的なものは存在していました。インターネット創成期から情報交換や交流を図るオンラインコミュニティはありましたし、2000年代初頭からは携帯電話でのインターネット接続の実現(1999年iモードサービス開始)により携帯電話が爆発的に普及して、携帯向けの掲示板サービスや特定世代にとっての”黒歴史の宝庫”「前略プロフィール」のようなサービスも若者を中心に流行しました。

2004年に登場した「mixi」はほぼ現在のSNSの要素を備えたサービスでした。初期のFacebookと同様に参加者の紹介が無いと入れないクローズドコミュニティであることや、情報の取得・発信・共有の範囲を制限することが可能な仕組み(閲覧範囲設定やコミュニティ)によって、誰それ構わず見られてしまうことが無いという安心感から利用者を増やしていきました。後発であるFacebookやTwitterといった黒船の来襲や、度重なる規約変更(紹介制度の廃止など)によるユーザー離れがなければ今でも十分通用する国産SNSだったと思います(※「だった」と書きましたが、2020年12月現在mixiはサービスを継続して提供しています)。

これは私見ですが、SNSという言葉が発生する以前のサービスと以後のサービスの顕著な違いは、「単一の目的ではない幅広い利用者を取り込んでいること」だと考えます。機能だけでなくサービス内に社会=Socialが発生するくらいの様々な年代・目的・価値観を持った利用者数がいる状態がSNSと呼ぶのにふさわしいと思うのです。

会員登録やユーザーの交流等の機能だけでSNSと呼ぶのであれば、出会い系サイトだってSNSです。しかしそこには「出会いを求める」という単一の目的を持ったユーザーしか集まりません。オンラインゲーム上のチャットも「ゲームを遊ぶ」という目的で集まったユーザーです。TwitterやFacebook、Instagramに登録している人は、そもそも登録した目的も様々ですし、当然のように年齢・性別・収入・趣味趣向もバラバラです。そういった人がたくさん入っている箱=SNSと呼べると私は考えます。

SNSの特徴

SNSは様々な人が情報を発信・閲覧する場所ですから、そこにはビジネスの情報=宣伝も多数存在します。運営会社に費用を払って表示する広告もありますし、自分の投稿で情報を発信することもできます。

Web広告を出したり情報を発信するならWebサイトでもできますし、SNSの利用者数よりWeb全体の閲覧者数のほうが多いのは明らかです。それだけ考えるとユーザーの母数が少ないSNSのほうが不利に見えますが、SNSには普通のWebサイトにはないいくつかの特徴があります。ここからはSNSと普通のWebサイトの違いを中心にSNSの特徴を説明していきます。

自分以外の人が情報を拡散してくれる

SNSにおいて自分の投稿はフォロワーや友達のタイムラインに表示されます。表示された投稿を別の人がリツイートやシェアすることで、その人のタイムラインにもあなたの投稿が表示されます。その人のフォロワーや友達のタイムラインにもあなたの投稿が表示されることになり、それをさらにリツイートやシェアされると…のように自分以外の人が自分の情報を発信・拡散してくれるところがSNSの最大の特徴です(Instagramにはリツイートやシェアに該当する機能はありませんが、TwitterやFacebookと連動させることはできます)。

自分の情報の発信者=自分だけ(自前のWebサイトなど)「オウンドメディア」というのに対して、自分以外の人が自分の情報の発信者になってもらえるSNS等「アーンドメディア」と呼びます。

オウンドメディアはコンテンツを載せてもそこに辿り着いてもらわないと見てもらえませんが、アーンドメディアはあなたのことを直接知らない「友達の友達」や「友達の友達の友達」のタイムラインにも情報を表示させることが可能です。

ただし「拡散できる機能を有している」だけで「自動的に拡散される」わけではありませんので、その点は注意してください。

利用者が触れる回数が多い

友達申請やフォローをされた人のタイムラインには、あなたの投稿と同時にあなた以外の友達やフォローした人の投稿も表示されます。わざわざ個々の人のページを見に行かなくてもタイムラインさえ見ていれば情報が入ってくるのです。

タイムラインの情報は常に最新に更新されるため、1日に何度も見に来る人もいます。自前のWebサイトを1日に何度も見に来る人は稀ですが、ニュースサイトやニュースアプリと同様にSNSは1日複数回見られる可能性の高いメディアなのです。

あなたのWebサイトを毎日何度も見に来る人はあまりいないでしょう。しかしSNSは友達やフォローがあれば、あなたの情報だけを見たいと思っていなくてもタイムライン上に表示されるあなたの投稿を見てもらえるし、その回数が1日複数回になる場合もあるので情報に触れてもらえる可能性が高いということができます。

ただしこれも「情報の接触回数が多くなる仕組みがある」だけで「自動的に多数の人に情報を複数回見てもらえる」わけではありませんので、その点は重ねて注意してください。

一方的な発信ではなくフィードバックがある

SNSにはリツイートやシェアだけではなく、コメントやいいね!など投稿自体に反応を返す機能があります。ブログにも記事にコメント欄があるものがありますが、SNSは反応を返す=フィードバックする機能が多彩であることも特徴の一つです。

フィードバックの種類が多いと、フィードバックを使ってくれる人も増えます。ただ情報を見られた件数だけではなく、その情報に反応してくれた人、有益に思ってくれた人がどれだけいるかがわかるのは、発信者にとっても有益です。もっとも簡単な効果は反応がある=情報を見てもらえている、反応が無い=情報を見てもらえていないが一目でわかることです。

「見ているだけで反応していないだけかもしれない」と思っている人もいるかもしれませんが、そもそも見ている人が少ないから反応が無いと考えたほうが良いでしょう。いいね!等のハードルが低いリアクションすら無いというのはあなたの投稿が誰にも見られていないか、全く共感されていないか、あるいはその両方である可能性が高いです。

「誰にも見られていない」理由は色々あります。

  • そもそも友達やフォロワーの数が少ない or いない
  • 投稿した時間が深夜等で誰も見ていない
  • 他の人も多数投稿したのでタイムラインが流されてしまった

ここまで何度も「ただし」を付けてきましたが、上記のような状態だと期待するような効果は発生しないということなのです。

操作が簡単で即時性が高い

大部分の利用者はスマートフォンなどのモバイル端末からアプリを使ってSNSを利用しています。Instagramはそもそもモバイルからしか投稿できません(強引にパソコンから行う方法も無くはないですが、一般的ではありません)。

SNSは閲覧するのも投稿するのも複雑な操作をほぼ必要としません。また様々なSNSで似たような機能があるため、1つのSNSが使えれば他も大体使うことができ、基本的には文字入力さえできれば投稿を行うことができます。

モバイルアプリならではの特徴として即時性が挙げられます。パソコンの前にいなくても今目の前で起きていることをモバイルからその場で投稿することができるのです。この特性が災害発生時等に効果を発揮したことは皆さんの記憶にも残っているのではないでしょうか。

Webサイトだってモバイルから更新できないことはありませんが、SNSは「即時性」に「拡散」や「接触回数が多い」等の特徴が組み合わさって、一瞬で大量の人に情報が拡散される=バズるという状態が発生するのです。

タイムラインは流れていく

ここまでSNSの特徴の中でもメリットを中心にお話してきましたが、デメリットもあります。「誰にも見られていない理由」でも少し触れましたが、SNSのタイムラインは最新の情報が上位に表示され、古い情報は後方へ流されていきます。バズった投稿でも、一カ月もたてば流されて忘れ去れるのがSNSなのです。

InstagramストーリーズやTwitterのFleetのように意図的に一定時間で消えるものもあります。これは「画面上部に表示されるので通常投稿よりも遷移されやすい」「Instagramの場合通常投稿はURL遷移ができないけどストーリーズは可能」など様々なメリットがありますが、結局これも情報としては流されていきます。

他のテキストサイトでは作成したコンテンツは永続的に残るのはもちろん、ユーザーがアクセスしやすいようにカテゴリを作成したりメニューを設定することもできますが、SNSの場合過去の投稿はとにかく下へ下へと押し流されていきます。TwitterやFaceboookで自分の投稿の先頭に特定の投稿を固定することができますが、固定できる投稿は1つだけです。

SNSは鮮度が命です。投稿頻度が低いと情報が埋もれて届かなくなります。とにかく投稿し続けること、有益な情報を出し続けること、埋もれないように届け続けることが必要なのです。

そのためSNSは「情報の蓄積」や「恒久的に閲覧してもらうコンテンツの設置」には向いていません。ここはむしろ普通のWebサイトが得意とする分野です。特徴を理解した上できちんと使い分けましょう。

SNS内でしか閲覧できない

いくら情報接触の機会が多いとはいえ、SNSのアカウントを保持していない人もいます。SNSのアカウントを保持していない人には情報を届けることができません。

あなたのお客さんはInstagramのアカウントを持っているでしょうか?Twitterのほうが多いでしょうか?どちらもいるので両方やるというのもいいですが、写真メインのInstagramと短文で頻度重視のTwitterでは投稿内容も効果も違います。そして投稿にどれだけ労力を費やしても、アカウントを持っていない人には全く効果がないのです。

「SNSアカウントを保持していない人を気にしてたらSNSで情報発信なんかできない!」というのも一理あります。SNSだけではなく、テレビCMだってテレビを付けていなければ、新聞広告だって新聞を読まなければ見られることはありません。全員にまんべんなく情報を届けるツールなど無いのだから、SNSだけが特殊ということはありません。

しかし改めて確認します。あなたのお客さんはInstagramのアカウントを持っているでしょうか?Twitterのほうが多いでしょうか?あるいはFacebookでしょうか?「どれもやっていない」という人が大半なのであれば、SNSでの情報発信は徒労に終わります。ターゲットとする客層と発信方法のマッチングには注意が必要です。

検索エンジンには引っかからない

「SNS内でしか閲覧できない」とほぼ同じ意味です。Google検索してもあなたの投稿は検索結果に表示されません。前述の通り、SNSは登録された利用者だけが閲覧できます。検索した人がTwitterやFacebookのアカウントを保持しているのかどうかをGoogleは知りません(知ってる可能性はありますが明言はしません)。見れるか見れないかわからないものを検索エンジンは提供しないのです。

SNS内でバズったとしても、情報が拡散されるのはあくまでそのSNSの中だけです。GoogleやYahoo!の検索の検索結果は全ての人に表示され、その表示順はSNSほど短時間では変動しません。先ほどの「タイムラインは流れていく」も含めて、1つのコンテンツで長い期間集客するのはSNSより普通のWebサイトが向いていると考えます。

SNSは多数の投稿(コンテンツ)でタイムラインに載り続ける(情報に接触する機会を増やす)ことで短期的な集客を獲得することが得意なツールなのです。もちろん多数の投稿を長期間続ければ長期的な集客も不可能ではないですが、そこまでの労力がかけられるか考えてからやってみてください。

ちなみに「あまり何度もしつこく投稿が表示されると逆に嫌がられるのではないか」と思っている方もいると思いますが、嫌がられるくらい投稿しつづけられる時間と労力とネタを準備してから心配してください。タイムラインに連投で表示される間隔(30秒~1分間隔)で投稿しない限り、嫌がられるほど表示されませんし見られてもいません。相手のタイムラインにはあなたの投稿以外の情報もたくさん表示されています。嫌がられる心配より見られない心配をしたほうが懸命です。

炎上リスクがある

「ビジネスでのSNS活用=炎上リスク」というくらい真っ先に心配されるのが炎上ですが、安心してください。そもそも見られていないアカウントは簡単には炎上しません。

SNSで炎上するのはいくつかの条件が重なった時ですが、その中で最も重要なのは「炎上してしまうような投稿が多くの人の目に触れること」です。一度炎上すると普段あなたの投稿を見ない人にも拡散されますが、炎上前の段階では通常の投稿と同様に普段あなたの投稿を見ている人(友達やフォロワー)にしか投稿は表示されていません。その人たちの中の何%かが「この投稿はまずいんじゃないの?」と思って拡散を開始するのですが、これもその人の投稿を普段見ている人までしか届きません。そもそも普段投稿を見ている人が少ないアカウントの場合、この最初の「何%か」が限りなくゼロに近いわけです。

単純に「簡単には炎上しないから大丈夫ですよ」という意味ではありません。「炎上を心配しなければいけないくらい友達やフォロワー集まってから心配してください。友達やフォロワーがほとんどいないのに、あるいはまだSNSをはじめてもいないのに炎上を心配するのは、家建てる前から火災保険に入るようなものです。」という意味です。さらに短縮すれば「見られても無いSNSで炎上の心配とか、寝言は寝て言え。」です。

もちろんはじめから炎上覚悟で、あるいは炎上を気にせずにSNSを開始することはお薦めしませんが、リスクばかりを気にして手を動かさないよりはまずははじめてみるべきです。冒頭にも書きましたがSNSの強みはメールのような手軽さです。ビジネスメールで常識外れなことを書くような人で無い限り、自分の商売を宣伝しようとする場に人を不快にさせるようなことは書きません。「お前の記事は端々に人を不快にさせそうな表現があるが、それはどうなんだ?」という方がいらしたらすみません。こういう文体を売りにしてやらせていただいています。

確かに炎上は一度はじまると止めようがありません。しかしそのリスクを心配してSNSの活用を躊躇しているのであれば、思い出してください。「そもそも見られていないアカウントは簡単には炎上しません」。はじめたばかりのアカウントをいきなり炎上させるのはむしろ才能と言っていいかもしれません。

SNSサービス毎の特徴を理解しよう

上記の特徴からSNSはビジネスの情報を発信する場所として非常に有効なツールです。いくつかのデメリットはありますが、双方向性や情報の拡散力はこれまでの情報発信ツールにないSNSならではのメリットです。

しかし繰り返し述べてきたように、SNSで情報を発信すれば自動的に情報が拡散されるわけではありませんし、あなたのターゲット層がSNSを利用しているとも限りません。

SNSにも様々な種類があり、それぞれに特徴があります。特徴を理解した上で自分の事業や自分のお客さんとの親和性が高いツールを選ぶことがSNS活用を成功するための最初のカギになります。また「双方向」であるということは、あなたが発信するだけでなく他の人の発信に反応することも重要です。SNSの活用には情報発信だけではなくコミュニケーションが鍵になります。

次回は具体的なSNSサービス毎の特徴を紹介していきたいと思います。

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