独占業務型のWebサイトの注意点 | Webマーケティング入門 chap.1.5

何故Webサイトを作るのか?」の具体例を考える「業種別にみるWebサイトで集客するべき必然性」の第5回、今回は弁護士や税理などの士業や医師・医院などの【独占業務型】の業種について、Webサイトで集客する必然性を考えていきたいと思います。

この記事を含む「Webマーケティング入門」が対象にしているのは主に個人事業主や零細企業などの小規模事業者です。個人事業主といっても業種・業態は様々なので、ここでは大きく4つに分類します。

分類定義事例
サービス提供型提供しているのは「サービス」や「体験」で、店舗に来店してもらう必要がある業種。美容室・理容室、整体・マッサージ、旅館・民宿、飲食店(通販不可)
スキル提供型提供しているのは「専門的な技術」で、店舗は無いが打ち合わせ等を通じて納品物を作り上げる業種。カメラマン、デザイナー、コンサルタント、エンジニア、ライター
プロダクト販売型提供しているのは具体的な「製品」で、店舗以外でも通販などで届けることができる業種。飲食店・食品販売(通販可)、アクセサリー・雑貨、ソフトウェア・Webサービス販売
独占業務型基本的にはサービス提供型だが、専門性が高く資格が必要なため参入障壁があり同業内のみでの集客争いになる業種。士業(弁護士、税理士、会計士、行政書士)、医師

あなたが企業に所属しており、あなたの意思だけではなく組織の意向としてWebサイトを作成しようとしている場合は、以下の記事を読んでいただくことをお勧めします。

独占業務型の特性はスキル提供型とほぼ同じ

弁護士や税理士のような士業は、資格を保持して許認可に基づき事業を行っています。専門性に基づいてサービスを提供するという意味では前述のスキル提供型と近い特性があります。医師・医院の場合来院が必要なためサービス提供型の部分もありますが、こちらも高い専門性を有するため、スキル提供型と言えるでしょう。

スキル提供型と独占業務型を分けた理由は資格の有無だけではなく、「Webサイトでの集客」において独占業務型には避けて通れない壁があるからです。

士業や医師のWebサイトには規制がある

士業や医師の広告宣伝は、一般の人が判断できないのをいいことに不当な情報で集客しないように法律で規制したり、同業内で悪いイメージが発生しないように業界として規律を設けています。近年になってようやく一部が許可されるようになりました。それでもいくつかの規制が残っており、WebサイトやSNSも規制の対象になっています。

医師・医院のWebサイト規制

※いずれも厚生労働省ホームページより

医療機関の広告宣伝は法律や省令によって規制されており、Webサイトについても満たさなければいけない要件と禁止事項があります。

医療法には「広告可能事項の限定」として広告宣伝していい26項目が定められており、この項目以外を用いることは禁じられています。ただしWebサイトの場合は以下の要件を満たした場合のみ「広告可能事項の限定」を受けず情報発信を行うことができるため、基本的に医療機関のWebサイトが満たすべき要件であると考えます。

  1. 電話番号やメールアドレスなどの問い合わせ先が記載されていること
  2. 自由診療についての情報を記載する場合は、通常必要とされる治療内容、標準的な費用や標準的な治療期間、治療回数の記載がされていること
  3. 自由診療についての情報を記載する場合は、主なリスクや副作用についての情報が提供されていること

上記要件を満たした場合でも、誇大表現や他の病院との比較、治療効果に関する体験談等は掲載してはいけない事項が定められています。

またWebサイト以外の場合、例えばリスティングやバナーのようなWeb広告は「広告可能事項の限定」の対象になります。広告規制に違反した場合には罰則もあります。

弁護士のWebサイト規制

※いずれも日本弁護士連合会ホームページより

弁護士の広告については日本弁護士連合会(日弁連)の規則によって定められています。所謂「業界団体による自主規制」です。WebサイトやSNSも「広告」の一部として規制を受けることになりますし、Web広告も当然対象です。

具体的に規制されている事項は以下の7項目です。

  1. 事実に合わない広告
  2. 誘導または誤認のおそれのある広告
  3. 誇大または過度な期待を持たせる広告
  4. 困惑させまたは過度な不安をあおるような広告
  5. 他の弁護士・法律事務所と比較をおこなった広告
  6. 法令に違反したり弁護士会の会則や会規に違反する広告
  7. 弁護士の品位または信用をそこなうおそれがある広告

具体的な例

訴訟の勝訴率規程4条1号で禁止
顧問先や依頼者の名前規程4条2号で禁止(書面による同意がある場合OK)
過去に取り扱った事件規程4条4号で禁止(書面による同意があり、広く一般に知られている事件又は依頼者が特定されず、且つ依頼者の利益を損なうおそれがない場合はOK)
「○○専門弁護士」「○○に強い弁護士」のような表現専門性や強さの客観的実証が無ければ「誇大または過度な期待を抱かせる広告」とされる

規制を理解しないとWebサイト作成は難しい

税理士、司法書士、行政書士等も弁護士同様に業界団体による自主規制があります。規制を正しく理解していないとWebサイトの作成は難しいでしょう。

例えば医師・医院の場合、広告可能事項のみを掲載したWebサイトであれば他の規制を考慮しなくていいかもしれませんが、そもそもどこまでが「広告可能事項」に該当するのか事例も含めて理解していなければいけません。規制内の情報のみでWebサイトを作ったとして広告宣伝の効果がどこまであるかも考えたほうが良いでしょう。広告可能事項の限定を受けない場合でも、治療前・治療後の写真の掲載などにも注意が必要です。

他の業種で説明してきた内容に加えて、これらを理解した上でWebサイトの作成・運用を行わなければならないので、士業や医師の自前のWebサイトのハードルは高いのです。

外注する場合も、Webマーケティングの知識は必要

士業は法律などの制度に精通しているので、こうした規制も理解されていると思います。特に弁護士は規制を理解した上でWebサイトでの情報発信を積極的に行っている方が多いですが、コンテンツの文章はともかく自力でWebサイトを構築されている方はそう多くは無いのではないでしょうか(いないとはいいませんが)。

独占業務型の事業者は他の事業者から見ると高額の収入を得ている印象が強いですが、「稼いでるんだから自力でやらずとも外注できるんでしょ」という意味ではありません。

スキル提供型の業種でも「無料ホームページサービス等で作った簡易的なWebサイトや、稚拙ながら自力で作ったWebサイトではなく、業者に作成を依頼するのが無難」であり、さらに高度な専門性を有していて規制の考慮まで必要な独占業務型は猶更専門業者に依頼するべきだということです。

作成そのものは外注するとしても、自分で仕組みを理解する必要はあります(詳細はこちらの記事に記載しています)。

規制があるとはいっても、基本的な目的は他の業種と同様に「問い合わせ」「予約・来店(来院)」であり、Webを活用して広く認知を得るために必要な行動はこれまで紹介してきた他業種と同じです。つまり理解しなければいけない仕組みも同じなのです。

他の記事と同じ内容を繰り返しになってしまうので、他業種の事例は記事下部のリンクから各記事に遷移して確認してください。

結論

  • 独占業務型のWebサイトには規制がある。
  • 規制を理解した上できちんとしたWebサイトを作るためには専門業者に依頼すべき。
  • でもWebマーケティングの知識は自力で理解してね。
  • 詳しくは他業種の記事を参照。

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