Webサイトで問い合わせを受ける【スキル提供型】 | Webマーケティング入門 chap.1.3

Webサイトで問い合わせを受ける【スキル提供型】 | Webマーケティング入門 chap.1.3

デザイナー

何故Webサイトを作るのか?」の具体例を考える「業種別にみるWebサイトで集客するべき必然性」の第3回、今回はデザイナー、カメラマン、コンサルタントなどの【スキル提供型】の業種について、Webサイトで集客する必然性を考えていきたいと思います。

この記事を含む「Webマーケティング入門」が対象にしているのは主に個人事業主や零細企業などの小規模事業者です。個人事業主といっても業種・業態は様々なので、ここでは大きく4つに分類します。

分類定義事例
サービス提供型提供しているのは「サービス」や「体験」で、店舗に来店してもらう必要がある業種。美容室・理容室、整体・マッサージ、旅館・民宿、飲食店(通販不可)
スキル提供型提供しているのは「専門的な技術」で、店舗は無いが打ち合わせ等を通じて納品物を作り上げる業種。カメラマン、デザイナー、コンサルタント、エンジニア、ライター
プロダクト販売型提供しているのは具体的な「製品」で、店舗以外でも通販などで届けることができる業種。飲食店・食品販売(通販可)、アクセサリー・雑貨、ソフトウェア・Webサービス販売
独占業務型基本的にはサービス提供型だが、専門性が高く資格が必要なため参入障壁があり同業内のみでの集客争いになる業種。士業(弁護士、税理士、会計士、行政書士)、医師

あなたが企業に所属しており、あなたの意思だけではなく組織の意向としてWebサイトを作成しようとしている場合は、以下の記事を読んでいただくことをお勧めします。

最終目的は「契約」、Webの目的は「問い合わせ」

問い合わせ

スキル提供型の業種が求めることはお客さんに契約してもらうことです。サービス提供型でもプロダクト販売型でも同じと言えば同じなのですが、スキル提供型は契約時点でお客さんが製品やサービスをまだ受け取っていない状態であることが多いのが特徴の一つです。

成果によって支払いが決まる契約もありますが、先に金額を決めて契約するのが一般的です。売り物が「スキル」という抽象的なものなので、100%お客さんの思っていた通りの結果にならないこともあります。まず契約ありきにしないと、駄々こねられたり揉め事になった挙げ句で報酬をもらい損ねてタダ働きになってしまう恐れもあります。飲食店でご飯を食べて「好みの味じゃなかったからお金は払わない!」と言い出す人はあまりいないと思いますが、デザイナーやコンサルタントに「満足のいく結果にならなかったからお金を払わない!」と言い出す人は少なからずいます。

もう一つの特徴は「来店もいらないが即時決済も難しい」ことです。

カメラマンやデザイナー、コンサルタントはお客さんと打ち合わせをして成果物を決めていきますが、打ち合わせをする場所は自身の事務所である必要はありません。お客さんの所に訪問することもよくありますし、何なら会食しながら話を勧めることだってあります。特定の場所を必要としないのでお客さんに足を運んでもらうことは考慮しなくても良いのです。

その一方で成果物が決まらないと値段の付けようも無いので、「写真1枚5,000円です」とか「経営コンサル一月30万円です」のようにメニュー表を提示してクリックして購入のような即時決済も難しいです(参考価格として提示していることはありますが、何をお願いしてもその価格というわけではありません)。

この2つの特徴からスキル提供型の業種にとってWebの目的は「問い合わせを受け付けること」になるでしょう。いきなり契約はできないので、とりあえずどういう内容で話を進めることができるか一度話したいという方からの問い合わせを受け付けることで、商談を進めるきっかけを作ることができます。

電話やメールの連絡先をWebサイトに掲載することもできますが、いたずら電話やスパムメールの危険性を考えると問い合わせフォームを設置するのが一般的です。

何故あなたに仕事を依頼するのか?

ビジネス

お客さんは何故あなたに仕事を依頼するのでしょうか?

  • 知人だから
  • 知人・取引先等身近な人に紹介されたから
  • スキル保有者紹介サービスで紹介されたから
  • 有名な雑誌等で写真やデザインを使われていたから
  • 誰もが知るような企業と仕事をした実績があるから
  • 著名な賞を受賞しているから
  • その領域での代表事例として紹介されるような成功事例を作り上げたから
  • メディアで取り上げられていたから

上から下に向けての推移はスキル提供型の業種の方がお客さんの増やしていく過程に近いのではないでしょうか。

あなたがこの仕事で独立したての時、よほど名の知れた有名人でない限り知人や前職の時の繋がりなど自分が声を掛けられる身近な人に声をかけることからはじめるでしょう。その人たちは事細かに説明しなくても既にあなたの人となりやあなたの仕事についてある程度の理解しています。つまり信頼が得られている状態です。

次に最初に声をかけた人の知り合いや取引先の取引先など、「信頼を得られている人が信頼している人」という繋がりに広がっていきます。紹介サービスの場合、自分自身だけではなく「紹介サービス自体を信頼しているから」という要素も加わります。

仕事が軌道に乗りはじめると、これまでやってきた仕事が「実績」として蓄積されていきます。実績がある人はより信頼されやすくなります。さらに実績が賞賛されたり注目されたりすると「権威」を持ち始め、信頼はより確固たるものになります。

要するに、お客さんがあなたに仕事を依頼するのは、あなたを信頼しているからです。

前述の通りスキル提供型の業種はお客さんが対価を得る前に契約が行われるのが一般的です。きちんとした仕事をしてくれるかわからない人にいきなりお金は払えません。「この人はきちんとした仕事をしてくれる」と思ってくれているから契約してくれます。

飲食店であれば料理が美味しそうか、美容室であれば腕が確かかなど、提供されるものを実際に見て確かめることが可能ですが、スキル提供型の場合提供されるものは抽象的です。カメラマンやデザイナーの技量も、見る人の感性によって好き嫌いがありますし、納期をきちんと守れるか・協業する人たちとうまく関係を構築できるかのような最終成果物の出来栄え以外の仕事の進め方も評価の対象になります。コンサルタントに至ってはさらに抽象的で、何をもって最終成果物とするか案件によって異なります。ある案件ではうまくいったけど別の案件ではうまくいかないということもあります。そうしたリスクを受け入れられるのは、あなたを信頼しているからに他ならないのです。

「そんなことお前に言われなくてもわかっとるわ!」と思うかもしれませんが、これを明らかにすることはWebサイトと密接に関連してきます。

あなたのWebサイトを見にくる人は誰か?

Webマーケティング

上記のことからWebサイトで発信すべき内容は自ずと決まってきます。より多くの信頼を得るために、自身の専門性や実績、提供できるサービスの内容などをできるだけ詳細に発信して自分を売り込むのです。

ここで一つ質問です。

あなたのWebサイトを見に来る人はどんな人でしょうか?

業務でカメラマンやコンサルタントを探している人がふらっとWebサイトを見に来て「この人は信頼できそうだからお願いしてみようか」となるでしょうか?十中八九ならないでしょう。Webサイトで発信している情報だけを見て「この人は信頼できそう」と判断して自身のビジネスの一端を任せるような人はかなり稀です。

あなたのWebサイトを見に来る人は、何だかの形で既にあなたのことを知っている人です。名前だけ聞いたことがある、知人から紹介されたけどまだ連絡も取っていないし面識もない、仕事を依頼する相手としてふさわしいかどうか情報を収集したい。だからWebサイトを見に来たのです。

Webが主戦場のWeb制作会社やWebコンサルタントであっても、Webサイトの内容だけを判断基準に業務を依頼されることは稀でしょう。Web上で有名人になってくると直接的なつながりがなくても依頼が入ることはあるかもしれませんが、それは自前のWebサイトの情報だけではなく他の情報によって信頼が補完されていることが前提になります。

つまりあなたのWebサイトを見に来る人は、上記の「あなたに仕事を依頼する人」に該当する人がほとんどなのです。

見ず知らずの人から問い合わせを受けるのは難しい

検索

とはいえ新規受注を増やそうと思ったら、これまで繋がりのない人に情報を届けなければいけません。

最近はコンテンツマーケティングと言って、自身の持っているノウハウ等をWebサイトのコンテンツとして掲載し、その内容に興味がある人を検索流入で獲得するような手法もあります。しかしお客さんが一般消費者で検索ボリュームが大きくWeb上で決済や契約が成立するようなBtoCのビジネスであれば効果があるかもしれませんが、BtoB中心のビジネスは検索キーワードがピンポイントで流入数自体が少なく、前述の通りいきなり契約ということは稀です。コンテンツだけで契約まで繋げるのは難易度が高いと言えるでしょう。

さらに言えば、あなたはWebサイトで公開できるような実績やノウハウを多数持っていますか?スキル提供型の業種にとってノウハウ=飯のタネです。誰でも閲覧できるようなWeb上にどこまでの情報を公開することができますか?そしてその情報は自身の価値を高め、相手の信頼を勝ち得るに足るものですか?あなたが見てもらいたい人にとって価値のある情報ですか?

あなたの扱っているジャンルに興味があって検索してたまたまWebサイトに訪問して来た人から信頼を勝ち取って問い合わせ・契約に繋げるためには、信頼を得るに至るのに必要な情報を質と量の両面で相当作りこまなければいけません。企業であればこうした手法で戦略的に集客を行う余力もあるかもしれませんが、フリーランスや個人事業主が本業もやりながらそこまでのコンテンツを揃えたWebサイトを作るのは厳しいでしょう。

例外的にWebサイト制作・Webコンサルティングについては可能と言えるかもしれません。提供するスキルがWebサイトの構築・集客ですから、自身のWebサイトにノウハウを徹底的に入れ込んで集客に成功すれば実績になります。むしろ自分のWebサイトの集客もおぼつかないWebコンサルタントに仕事を依頼しようとは思えません。

Webサイトはあなたの名刺を補足するくらいのもの

名刺

話を戻すと、あなたのWebサイトを見に来る人は、「あなたに仕事を依頼する人」に該当する人であり、既に多少なりともあなたに対して信頼を寄せようとしています。

しかしWebサイトに載せている実績や経歴、コンテンツを見て即契約を決めるかというとそうではありません。「とりあえず話を聞いてみようか」と思ってもらえるための足しになるくらいです。

話を聞いてみようと思った時に、Webサイトの問い合わせフォームから「話を聞きたい」という連絡を入れてくる確立は低いでしょう。相手はあなたについて多少なりとも知っています。知人からあなたのことを聞いたのであればその知人の伝手で連絡を取ってくるでしょう。何の伝手も無いのにいきなり問い合わせフォームから連絡を入れることはBtoBのビジネスにおいてあまり見られません。資料請求フォームがある場合もありますが、多くの場合はプロダクト販売型の場合に限られます。

あなたが相手に信頼されなければいけないように、相手もあなたに信頼されたいと考えています。「ビジネスは信頼が資本」は当たり前のように使われる言葉ですが、信頼は双方向にあってはじめて成立します。発注側も受注側に「信頼に足る取引相手」であることを示そうとしてきます。紹介してくれた人はあなたを信頼してくれている人=あなたも相手のことを信頼しているという前提で、「信頼できる人からの紹介」であなたに連絡を取ろうとするでしょう。

これだと冒頭の「Webの目的は問い合わせ」は成立しないように見えるかもしれませんが、問い合わせフォームから得られる問い合わせだけが問い合わせではありません。Webサイトを見て「話を聞きたい」を思って連絡してきてくれるのであれば、連絡手段が問い合わせフォームでなくても目的は達成されます。

言うなればWebサイトはあなたの名刺の補足です。91×55mmサイズの名刺には名前・肩書・連絡先くらいしか情報がありません。あなたの実績や実際の仕事ぶりを知ってもらうための補足資料が必要です。しかし資料だけではあなたの人となりや相性のようなものまで測れない、だから結局会って話をしてみることになるのです。

こうした補足資料を纏めたWebサイトを「ポートフォリオサイト」と呼びます。ポートフォリオとは「作品集」と訳されることもあります。デザイナーなどのクリエイター系の業種では自分が今まで携わってきた仕事(パンフレットやポスター、書籍の表紙など)を紹介するもので、営業資料だったり就職・転職時の実績をアピールする際に使われます。ポートフォリオサイトはこれをWebで作成したものです。

ポートフォリオをWebで作成する必要性があるか

ポートフォリオ

ここまでWebサイト前提で話を進めてきましたが、ポートフォリオはWebで作成する必要性があるでしょうか?

答えは「必ずしもWebでなくてもよい」です。紙資料でもPowerPointで作成したデータでも何でもいいのです。

ただしポートフォリオをWebで作成するメリットはあります。直接連絡しなくてもポートフォリオを見てもらうことができることです。

前述の相手はあなたのことを知っているけどまだ直接連絡を取ったことがありません。紙やドキュメントデータは対面したり連絡先を聞かないと入手できないため、一度直接連絡をとる必要があります。しかし相手はまだあなたに仕事を頼むかどうか迷っています。直接連絡をとってしまうと断りにくくなる恐れもあります。そこでWebでポートフォリオを公開していれば、相手はあなたに直接連絡しなくてもあなたのポートフォリオを見ることができ、内容を確認した上で直接連絡を取るか判断することができるのです。

ポートフォリオを見に来る所まで来ているということはかなり確度の高い見込み客です。確実に受注に繋げるためにWebサイトも丁寧な作りであることが望ましいでしょう。「丁寧な作り」というのは、後で紹介するような無料ホームページサービス等で作った簡易的なWebサイトや、稚拙ながら自力で作ったWebサイトではなく、業者に作成を依頼するのが無難でしょう。

自力で作ることを否定するわけではありませんが、スキル提供型に求められているのは「その分野における高い専門性」であり、「Webサイトを自力で作れる能力」ではありません(Web制作会社以外)。ある程度自力で作成できる方やWeb系の業種で無い限り、Webサイト作成に貴重な労力を掛けるべきではないと思います。またポートフォリオサイトはコンテンツ数やページ数を多数準備する必要は無く、更新頻度もそこまで高くなくてもよいので、気合の入った1ページ(=ランディングページ)を作るだけならそこまで費用も高くなりません(内容にもよりますが)。

ポートフォリオサイトは「集客」にはあまり寄与しない

ポートフォリオをWebで作成するメリットはありそうですが、本題に遡ると「Webサイトで集客するべき必然性」を考えなければいけません。

ポートフォリオサイトは「既にあなたを知っている人」を対象にしており、あなたを知らない人に認知してもらうためのツールとしては役不足です。つまり「集客」にはあまり寄与できません。ポートフォリオサイトはコンテンツメディア等と比べるとコンテンツ数やページ数が少ないので、指名検索(あなたの名前やサイト名で検索エンジンで検索すること)にはひっかかりますが、例えば「広島 カメラマン」のような関連キーワードでの検索にはほとんどひっかかりません。

※広島在住なので例えに広島関係の例えがしばしば出てきます。

試しに「広島 カメラマン」でGoogle検索すると、OurPhotoやfotowa等の「スキル保有者紹介サービス」が上位に表示されます。ちなみに「広島 デザイナー」だと求人サイトばかり出てきます。

「じゃあ検索にひっかかるようなWebサイトにしないと意味ないじゃん!」と思うかもしれませんが、少し記事を遡ってください。「見ず知らずの人から問い合わせを受けるのは難しい」で長々と説明した通り、それだけで問い合わせや契約が取れるほど信頼を得られるようなWebサイトを作るのは難しいのです。

上の図はマーケティングにおける消費者行動モデルを表した「AIDAの法則」と、購買プロセスにおける顧客の推移を表した「パーチェスファネル」という概念を組み合わせたものです。名前はどうでもいいのですが、この図が表していることは2つあります。

1つは「お客さんが来店するまでには認知→興味→欲求→行動というプロセスを踏んでいる」ということ。もう1つは「フェーズ(段階)が進むごとに見込み客(問い合わせの可能性のあるお客さん)の数は減少する」ということです。だから最初のフェーズである「知っている=認知している」人を十分に増やさなければいけないのです。

この話は何度も出てくることになるので別記事に纏めました。

ポートフォリオサイトが寄与できるのは「興味」や「欲求」で、「認知」にはあまり貢献できません。ではどうやって認知を上げるのか。サービス提供型やプロダクト販売型であれば広告宣伝を勧めますが、スキル提供型の場合不特定多数を対象とした広告宣伝は費用対効果が良いとはいえません。あなたのスキルにニーズがある領域が限られているし、冒頭に戻るとスキル提供型のビジネスの根幹である「信頼」を広告宣伝で得るのは困難です。

つまりスキル提供型の業種において、Webサイトは既に認知のあるお客さんに実績を紹介するポートフォリオとしての役割が妥当であり、認知を高めるのは自身の本業の実績と信頼を地道に積み上げていくしかないなさそうです。

上記の通り、Webサイトを作れば契約がバンバン入るなんてことはありません。Webサイトの位置付けを明確にしてそれに掛けられる妥当なコスト(費用だけではなく時間と労力も)の中で運用するか、紙やPowerPointのポートフォリオで我慢するかどちらか選択してください。

結論

  • スキル提供型の業種にとってWeb活用の目的は問い合わせを受け付けること。
  • スキル提供型の業種にはポートフォリオサイトがお勧め。
  • でもポートフォリオサイトは認知の向上には寄与できない。
  • かといってコンテンツマーケティングで受注できる業種でもない(Web系除く)。
  • 認知を高めるには地道に実績と信頼を積み上げてください。

【業種別にみるWebサイトで集客するべき必然性】記事一覧


Webマーケティングカテゴリの最新記事